話し下手な私は、日常でも自分から話をすることを極力避けており、相手の会話に反応するというコミュニケーションが多いのですが、就職面接では自発的に経歴や考えを述べる必要があり、慣れない私は先日の面接で大失敗をしました(詳細は30代無職が思い知る、就活面接を頑張らなかった代償をご覧ください)。
面接にはある程度、話す内容を決めた上で臨んでいるのですが、想定していない質問にうろたえるだけならまだしも、用意していたことを話すだけでもスムーズに言葉が出てこず、しどろもどろになってしまっていました。あまりに悔しかったので、別記事「30代無職が思い知る、就活面接を頑張らなかった代償」で書いたように、言葉が出やすくなるトレーニングを欠かず意識してはいるのですが、それだけで改善するのかが不安で、梅田悟司さんの著書「言葉にできる は武器になる。」を読んでみたので、気づいたことなど書いていきたいと思います。
気付き
- 自分にとって言葉とは
- 普段気づかないような「内なる言葉」に耳を傾ける
- 自分と向き合うという苦行
取り入れたい習慣
- T字型思考法の手順
- 書き出す
- 連想と深化
- グルーピング
- 視点の拡張
- 客観性の確保
- 逆転の発想
- 複眼思考
- 自分と向き合う時間をつくる
終わりに
気付き
自分にとって言葉とは
筆者曰く、言葉には「外に向かう言葉」と「内なる言葉」の2種類があるそう。「外に向かう言葉」は文字通り、口から出す言葉、また口に出して良いと判断された言葉のことで、これは本音に限らず建前を含んだ、いわゆる人に話す言葉のこと。「内なる言葉」は反対に、自分でも意識していないような、心が感じた正直な言葉のことです。話すというのは「外に向かう言葉」を作り出す作業ですが、そもそも本心で自分がどう思っているかを理解し、自分なりの意見や考え方、伝えたい想いを持っておかないと、言葉が外に向かって出ていかないか、薄っぺらい言葉にしかならないそうです。
これを知ったとき、個人的にはものすごく納得ができました。振り返ると言葉に詰まる場面では、話す内容に自信が持てていないことがほとんどで、例えば面接で話すことを決めていたとしても、本当にそれを話して良いのか、自分の本心ではどう思っているのか、きちんと検証して納得したものではないことを、どこかで後ろめたく思っていたことが、言葉に詰まる原因になっていた気がしたからです。まるで他人の言葉を借りているような違和感を持っていました。
普段気づかないような「内なる言葉」に耳を傾ける
つまり、面接を例にすると、準備としてひつようなことは、話した方が良いことを挙げるだけでなく、それを本心ではどう思っているのか、内なる言葉に耳を傾けてちゃんと理解しておく必要があるということです。感覚的には、体面だけを気にして話をしようとすると、無意識のうちに本心がそれを邪魔して、言葉が出にくくしているようなイメージです。
自分と向き合うという苦行
内なる言葉に耳を傾けるという行為はつまり、自分と向き合うことです。私は外的に必要なことだけを考え、準備することが最も効率的だと考えていました。自分が本心でどう思っているかなんて重要なことではなく、いかに環境に適した行動に集中できるかが、人としての強さを決める要素だと考えていたし、例えばある仕事に取り掛かる際、心の中に怖くて萎縮した自分がいるとして、それを認めることができなかったので、自分の弱い部分と向き合うことを無意識で避けていたのだと思います。
しかし、自分の脳は思ったよりも正直で、理想通り強がり続けることは難しいようです。少なくとも気の弱い私には、会話の際に悪い影響が生まれてしまうので、自分と向き合うことは必要みたいです。普段意識しないようにしている、自分の弱くて愚かな言葉を拾っていく作業は、苦痛ばかりだと思いますが、苦しいことを避けて30数年を過ごしてしまった私に他の選択肢はありません。恐ろしい苦行にも自ら取り組んでいきたいと思います。
取り入れたい習慣
T字型思考法の手順
内なる言葉に耳を傾け、考えを整理して深める方法として、「T字型思考法」が紹介されていたので、備忘録としてポイントを押さえていきたいと思います。
1. 書き出す
頭の中だけでは、言葉と向き合う・考えることは難しいので、まず考えたいことについて書き出す作業が1番目のタスクです。このとき、思い浮かぶ言葉が消えてしまう前に、とにかく出てきた言葉を全て書き留めておくことが重要です。論理立てる必要も、テーマと関連している必要もなく、とにかく全てを書き出してみるようにします。
2. 連想と深化
次に、書き留めた言葉のなかから、考える軸となる物を選び、それを中心に「なぜ?(WHY)」を下に、「それで?(AND?)」を右に、「「本当に?(REALLY?)」を左方向に、それぞれの方向性で考えを深めていきます。「いま自分が何を考えているか」の抽象度に注意しながら、考える幅と奥行きを広げていくという作業です。
3. グルーピング
1と2で生まれた言葉を、考え方によっていくつかのジャンルに分け、塊を作ります。全ての紙を分類し終えたら、最も枚数の多い束をもう一度分類し、見直します。この分類・見直しという作業を3回ほど繰り返すと、ほぼ正しく分け切ることができるようです。グルーピングができたら、枚数が多い順に左から右へと並べ、塊の中でより本心に迫っているものを上から順に並べます。最後に、それぞれのグループに方向性としての名前をつけます。
4. 視点の拡張
足りない箇所に気づき、埋めていく作業です。まずは横のラインを意識して、考えが足りていない方向性がないかを考え、可能であれば追加します。その後に縦のラインを意識し、考えを深めていくのですが、順番は横のラインで幅を広げることを先に取り組むようにします。縦のラインで考えを深める際には、2でやったT字型思考法を用いると、より効果的。それぞれの言葉が重複なく、漏れもない状態が理想的で、その状態をマーケティング用語ではMECE(ミーシー:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)と呼ぶそうです。
5. 客観性の確保
時間をおいてきちんと寝かせることで、冷静な目線を確保します。時間をあけることでリフレッシュしてより客観的に作業に取り組むことができるようになり、抜け漏れに気付けるようにもなります。また、たまたま課題の答えになる言葉を見つけたり、探し物が急に目の前に現れたりする、「計画的偶然性:セレンディピティ」と呼ばれる現象が起こりやすくなります。課題意識が無意識のうちに潜在的な情報感度を高め、素晴らしい偶然を起こすことがあるとのことです。
6. 逆転の発想
これまでは自分の頭に浮かんだ内なる言葉を元に考えてきていて、いわゆる「自分の常識の範囲内」の話に過ぎません。ここから「考えが及ばないこと」にまで想いを馳せるべく、ここでは真逆を考えます。真逆と一言で言っても、「否定としても真逆」「意味としての真逆」「人称としての真逆」という3種類があるので、それぞれを当てはめて考えていきます。
7. 複眼思考
特定の誰かを思い浮かべ、その人になり切って考える工程です。「彼だったらどう思うだろうか」「彼女だったらこう思うに違いない」と想像することは、自分の視野を広げることにもなります。物事の捉え方は人によって大きく変わり、正誤はありません。自分の考えと言うのは「常識の壁」「仕事モードの壁」「専門性の壁」「時間の壁」「前例の壁」「苦手意識の壁」という6つの壁に囲まれていて、これをこれるためには他人の視点から考えることが最も効果的です。
自分と向き合う時間をつくる
以上に、正しく思考を進ませる具体的な7つのプロセスを記載しましたが、読んで分かる通り、時間と労力がかかり、かなり面倒です。やりたくない上に工程も複雑となると、いよいよ実行が難しくなってきますが、ここは大人になって、敢えて自分と向き合うための時間を意図的に捻出するしかないでしょう。「この日、これくらい時間をかけてやる」と事前に決意をしておかないと、きっと心が挫けてしまうはずです。自分を変えたい気持ちをもう一度思い出して、泣く泣くスケジュールに入れたいと思います。
終わりに
ほかにも、言葉を伝える、想いをさらけ出す手法について様々記載がありましたが、そもそも考えをまとめることができていない自分には、そこまでを求めるのは酷だと思い、ブログにも書かないことにしました。改めて言葉を上手に使える人になるのは難しいことだと思い知らされますが、これができる人とできない人で、天地の差ほど評価が別れることは、これまでの人生で実感してきました。自分にとってはハードルの高いトレーニングであるものの、なんとか食らいついて、人前でうまく話せる立派な人間になりたいと思います。
なお、著者の梅田悟司さんは電通のコピーライターで、言葉に対してこれ以上ないほど真摯に向き合ってこられた方だと思います。第一線で戦う人と全く同じことができるようになる必要はないと思いますが、少しでも近いスキルがみについて、生きやすくなれば良いなと心から願います。